遥か昔から日本人を健やかに保つために重用されてきた鰹節。
良い鰹節作りは、各工程の中で数々の職人たちの技が冴えてこそ。
本物の味を永く繋ぐため、鰹が水揚げされる鹿児島県・枕崎で直接仕入れ、港のすぐ近くで加工し始めます。
水揚げされた新鮮な鰹の中から鰹節に適した脂肪の少ないものだけを見極め、厳選する。
頭、背びれ、尾ひれを切り落とし、内臓を取り除く作業「生切り」。一匹の鰹から計四本の鰹節ができる。
鰹を籠に並べ煮釜で数時間かけて煮詰める「煮熟」。天候や鰹の魚体などの差で煮詰める温度は変えていく。
煮熟後に手作業で一本ずつ丁寧に骨や皮、鱗などを身が傷つかないように気をつけながら取り除いていく。
魚体ごとの違いを見極め、水分の抜け具合を音で聴き定め、薫りを嗅ぎ分け、仕上がり具合を触れながら確かめます。どんなに時代が進み、刻々と変化する時や環境の中でもただひたすらに五感を研ぎ澄ませ、鰹節づくりに精進しつづけます。
燻製の薪木には、樫やナラ、クヌギの木を使用。馥郁たる香りを放つ鰹節を作るために欠かせない木材。
鰹の個体差により火入れを約六回から十五回繰り返し燻製する「焙乾」。抗菌、香り付けのための大切な作業。
焙乾後、節を休ませる「あん蒸」。焙乾とあん蒸を繰り返すことで水分を外に出し、中心まで均等に乾燥させる。
焙乾を終えた状態のものを「荒節」という。この後、表面のタールを削り形を整えた「裸節」をカビ付け庫の中へ。
「ひとの手で百回さわって初めて本物の鰹節が生まれる」と昔から言われてきました。日本人には欠かせない食品である鰹節作りのために、鰹という素晴らしい素材に丁寧に手間をかけ、技を施し、活かしきることが久右衛門のこだわりであり務めだと考えています。
優良カビを植菌し、湿度が管理された室で貯蔵する。カビの働きにより発酵・熟成が進む。
カビ付けした鰹節は水分を抜くため太陽のもと日干しされる。この工程を繰り返し行い本枯鰹節に仕上げていく。
約半年から一年かけて丁寧に仕上げた本枯節。カビの作用により、旨味や香り、だし汁となった際の透明度が高まる。
仕上がった本枯鰹節の断面は美しいルビー色に鈍く輝く。節をたたき合せると、カーンと甲高い乾燥音が響く。