和食

  • 自然と歴史とともに歩んできた伝統の食文化

    南北に長く、国土の7割以上を山地が占め、周囲を海に囲まれた日本。
    その風土から四季折々、海の幸、山や里の幸に恵まれ、世界に誇れる豊かな食文化を持っています。素材を敬い生かす調理技術や道具、またこれを盛り付ける器や作法まで、その根本には自然へのオマージュと、長い歴史によって育まれてきた独自の文化背景があります。
    和食は、単なる料理方法の一つと位置づけるにとどまらず、日本の歴史や地域性そのものを食習慣として集約したと言っても過言でないのではないでしょうか。

    そんな和食を構成する重要な要素は、「食材」「料理」「栄養」「もてなし」の4つ。

  • 「食材」の自給率は諸外国と比べて高くはないものの、稲を中心とした農作物、里山の動植物など自然の恵み、豊かな漁場で獲れる様々な魚種と実に多彩です。地理的・気候的特徴から、この国は「食材」の宝庫であり、これを美味しくいただくための工夫が培われています。

    「料理」は、日本各地に豊富にある水を用いることで煮炊きする、蒸す、茹でるといった調理方法が発達し、また調理器具や器もその利用方法に合せて適した形となってきました。地域によって独特の食文化が根付いたものの、主食の米とともに汁物と主菜一品、副菜二品を食する『一汁三菜』という考えが根底にあり、和食の基本型となっています。

    「栄養」面でも、『一汁三菜』を基本とした食材を生かす料理は、素材の栄養素を壊さず、且つ動物性脂質の少ない低カロリーの料理をバランス良く摂取できるよう考えられてきました。

    長年、健康と長寿の国として日本を支えてきたのは、和食文化に他なりません。

  • 最後は「もてなし」。単に一料理店のサービスを表すだけでなく、自然を尊ぶ精神や人との絆を大切にする心、もてなす側ともてなされる側の作法など互いを思いやる気持ちが和食の重要な要素となったのです。そこには見た目の豪華さではなく、精神性や静寂を好む傾向にある日本の伝統宗教や行事と同じく「はかないものを愛する心〜侘び・寂び」という独特の精神が表されています。
    これらの4つが和食を形成する大切な要素として受け継ぎ、守られることにより和食は文化として確立されてきました。

    近年、食の多様化が進み、扱う食材も料理方法も一昔とは変わりつつあります。

    しかしながら、これは海外の食材や料理方法をうまく取り入れ、前述で記した和食を構成する4要素の考えを元に現代のスタイルに合った形に変化させている、いわゆる「温故知新」なのです。これが長年をかけて文化として確立された和食の強みであり、醍醐味だと確信しています。

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